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マンション評価額について

こんばんは

税務通信にマンションの評価についての裁判事例が掲載されておりましたので、ご紹介したいと思います。

以下税務通信No3657号から抜粋


東京高裁 評価通達6項の適用を巡り国勝訴

節税目的の不動産の取得で「特別の事情」の存在を認める

( 06頁)

東京高等裁判所(第7民事部・足立哲裁判長)は4月27日,賃貸マンションの相続税評価額を巡り争われた事件について,一審に続き( №3634 ・8頁),財産評価基本通達6項(以下,評価通達6項)に基づく国税庁長官の指示による評価を認め,控訴人である相続人の控訴を棄却した(令和2年(行コ)第242号)。

被相続人の生前から相続税の圧縮を検討

相続人(控訴人・被相続人の長男,長女,二男)は,平成25年9月,父親である被相続人が売買価額15億円で購入した法人向けの単身者用高級賃貸マンション(以下,本件不動産)を相続で取得した。

被相続人らは,生前から銀行との間で本件不動産の購入等による相続税の圧縮効果等を検討しており,被相続人は,平成25年6月に肺がんが発覚した直後,銀行から15億円を借入れた上で本件不動産を購入していた。

本件不動産について,相続人が,評価通達に基づき「4億7,761万1,109円(通達評価額)」と評価し,借入金15億円を債務として計上した上で相続税の申告を行ったところ,国が,評価通達6項を適用し,本件不動産の評価額は「10億4,000万円(鑑定評価額)」であるとして,相続税の更正処分等を行ったことで争いとなった。

争点は,本件相続開始時における本件不動産の時価(評価通達の定めによらない評価方法により本件不動産の時価を算定することが許されるか否か)である。

一審の東京地裁は,【参考1】のとおり判断し,国の行った相続税の更正処分等は適法と判断していた。

【参考1】一審の東京地裁の主な判断内容

本件では,①通達評価額と鑑定評価額との間に著しいかい離が生じていること,②相続税の負担減少を認識・期待して本件不動産が購入されたことから,評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができないなど,租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかであるといえるような「特別の事情」がある。

本件不動産の時価は,評価通達6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円となる。

●相続人と国が主張した本件不動産の評価額
相続人(通達評価額) 4億7,761万1,109円(土地3億3,925万6,689円,建物1億3,835万4,420円)
国(鑑定評価額※) 10億4,000万円(土地8億3,000万円,建物2億1,000万円)
原価法及び収益還元法により算定

東京高裁 一審の東京地裁の判断を支持

東京高裁は,一審の東京地裁の判断を支持し,本件不動産の時価は,評価通達6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円と認定している。

相続人からの主な補充的主張については,【参考2】のとおり判断した。

【参考2】相続人の主な補充的主張と東京高裁の判断の概要
〈相続人の主張①〉
 どのような場合に評価通達に定める評価方法以外の方法によって財産の価額を評価するかについての基準が明らかではなく,本件更正処分は,国民の租税に対する予測可能性を著しく失わせる不当なもの。租税法律主義の趣旨に反し, 評価通達6 項の適用に関する行政庁の裁量の範囲を著しく逸脱するものである。
〈東京高裁の判断①〉
 租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな場合についてまで,評価通達の定めにより評価すべきものではないし,そのような場合について評価通達の定めによらないで個別に財産を評価したとしても租税法律主義に違反するということはできない。被相続人は,相続税を減少させる目的で本件不動産を相続開始時の直前に15億円で購入しているのであるから,評価通達の定めによる評価額と現実の取引価格との間に著しいかい離があることは十分認識していたというべきであり,現実の取引価格によって課税されることについて予測可能性がなかったということはできない。
〈相続人の主張②〉
 評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格との間にかい離がある例は多数存在し,かい離の存在は一般的な現象である。
〈東京高裁の判断②〉
 本件不動産の通達評価額は,鑑定評価額の2分の1にも達しておらず,金額にして5億円以上も少ないから,そのかい離の程度は著しいといわざるを得ないところ,このような著しいかい離の存在が一般的であると認めることはできない。
〈相続人の主張③〉
 相続に際し,節税対策をとることは当然であり,被相続人が節税目的で本件不動産を購入したとしても,そのことが「特別の事情」を基礎づけるものではない。被相続人が本件不動産を購入したのは不動産賃貸業の一環であり,相続税対策のためではない。
〈東京高裁の判断③〉
 被相続人が相続税の圧縮を認識し,これを期待して15億円を借り入れ,本件不動産を購入したことは,租税負担の実質的な公平という観点から見た場合,通達評価額によらないことが相当と認められる「特別の事情」を基礎づける事実に当たるというべきである。被相続人らは,銀行の担当者と相続税の負担軽減の方法について相談し,その方策として,本件不動産を購入することになった経緯を踏まえると,本件不動産の購入が相続税対策のためであったことは明らかである。
ポイント

本件において,東京高裁は,通達評価額と鑑定評価額の著しいかい離の存在を指摘した上で,被相続人が生前から相続税の圧縮を認識して本件不動産を購入等したことは,通達評価額によらないことが相当と認められる「特別の事情」がある場合に該当すると判断している。基本的に,同様の争点が問題となった過去の事件と同じ判断である( №3612 ・6頁)。

本件は現在,敗訴した相続人から最高裁に上告及び上告受理の申立てが行われている。


以上となります。

通達による評価額と鑑定評価額が著しく乖離している場合には、物件の購入背景等しっかりお客様からお聞きし、気を付けなければなりませんね。

坂井

 

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