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インボイス下仕入控除制限分を対価に含めて所得計算

こんにちは

税務通信3712号により、インボイス制度下の仕入控除制限分を対価に含めて所得計算について記事がありましたので、紹介いたします。以下税務通信の内容です。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始すると、免税事業者等からの課税仕入れ等については、仕入税額控除の適用が期間に応じて制限されるため、仕入税額相当額のうち、一定割合は控除ができなくなる。

法人税では、この一定割合が控除できない額について、「対価の額」に含めて課税所得を計算することとされているため、仕入時に「対価の額」に含めるための対応が求められる。ただ、会計システムの改修が必要になることから、改修コストを抑えたい事業者等は、仕入時に無理やり対応することなく、決算時に追加処理を行うことも可能だという。

仕入時に完結なら対価に含めて仕訳

インボイス制度下の免税事業者等からの課税仕入れ等に係る仕入税額控除の制限は【参考1】のとおり。最初の3年間は、仕入税額相当額の80%に、次の3年間は仕入税額相当額の50%に制限され、6年経過すると仕入税額相当額の全額について仕入税額控除を行えなくなる(平成28年改正法附則52、53)。

法人税において、税抜経理で処理する場合、インボイス制度下の免税事業者等からの課税仕入れ等で【参考1】に応じた仕入税額控除が制限される部分は、「仮払消費税等」として仮受消費税等との清算に用いるのではなく、対価の額に含めることが、国税庁の「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」(消費税経理通達14の2)に示されている。

【参考1】免税事業者等からの課税仕入れ等に係る仕入税額控除の制限
期間 仕入税額控除の対象
R5年10月1日
~R8年9月30日
仕入税額相当額の80%
R8年10月1日
~R11年9月30日
仕入税額相当額の50%
R11年10月1日以後 なし

したがって、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの場合、仕入税額相当額の20%の部分を対価の額に含め、令和11年10月1日以後の場合は、仕入税額相当額全額を対価の額に含めることとなる。

例えば、令和5年10月15日に商品(本体価格10万円、消費税率10%)を免税事業者から仕入れた場合の仕訳は【参考2】①のようになる。

【参考2】仕入時に完結する仕訳例
①経過措置(80%控除可)期間内
(令和5年10月1日~令和8年9月30日)
仕入      102,000       現金  110,000
仮払消費税等   8,000
②経過措置終了後(R11年10月1日以後)
仕入     110,000 / 現金 110,000

ただ、【参考2】①のような仕訳は一回では対応できずに一旦、

 仕入      100,000       現金110,000
 仮払消費税等   10,000

と現行と同様の仕訳をしてから、仕入税額控除が制限される額2,000円を本体価格に加算するため、

仕入  2,000 / 仮払消費税等 2,000

と追加仕訳を切るような手順を行わざるを得ない事業者もいるだろう。

というのも、免税事業者等からの課税仕入れ等に係る仕入税額控除の制限の処理は、単純な税率変更とは異なるため、会計システムの改修コストが嵩むからだ。

 

決算時対応① 経費では雑損失計上で所得計算に影響なし

一方、仕入時は現行と同様の仕訳だけで、決算時に追加仕訳を行う対応も可能だ。ただ、ケースによっては、法人税申告書別表における調整が必要になる。

仕入時と決算時に対応する仕訳例を、(1)免税事業者等に経費(交際費等除く)を支払った場合と、(2)免税事業者等から棚卸資産を仕入れた場合に分けて考える。

まず、(1)経費を支払った場合、例えば、免税事業者に福利厚生費(本体価格10万円、消費税率10%)を支払った場合、支払時と決算時、それぞれの仕訳例は【参考3】のとおり。

令和5年10月1日から令和8年9月30日までに支払った場合(【参考3】①)、支払時に仮払消費税等として計上した1万円のうち、仕入税額控除が制限される2,000円(=1万円-1万円×80%)を、決算時に雑損失として計上すればよいという。2,000円は本来、福利厚生費に含めて処理すべきところ、決算時に雑損失として計上することで損金算入していることに変わりないため、結果的に申告調整は不要だという。

また、令和11年10月1日以後の場合(【参考3】②)、支払時に仮払消費税等として計上した1万円は、本来、福利厚生費に含めて処理すべきところ、決算時に雑損失として計上することで損金算入していることに変わりないため、結果的に申告調整は不要だ(国税庁「令和3年改正消費税経理通達関係Q&A」問7)。

 

決算時対応② 棚卸資産では申告調整が必要なケースも

次に、(2)棚卸資産を仕入れた場合、期末在庫の有無で申告調整の必要性が変わってくる。

● 期末在庫が発生する場合

例えば、X期に商品(本体価格10万円、消費税率10%)を合計20個(税込価額220万円)仕入れ、そのうち5個が期末在庫として残った場合、仕入時と決算時、それぞれの仕訳例及び申告調整の方法は【参考4】のとおり。

令和5年10月1日から令和8年9月30日までに仕入れた場合(【参考4】①)、仕入時に計上した仮払消費税等20万円のうち、仕入税額控除が制限される4万円(=20万円-20万円×80%)は、本来、商品の取得価額に含めて処理すべきだが、税務上は決算時に雑損失として計上しておく。ただ、期末在庫として5個残っているため、仕入税額控除が制限される4万円のうち、5個分に相当する1万円(=4万円×5個/20個)は売上原価とならず損金算入できないことから、法人税の所得金額に加算しなければならないので、別表四で加算(留保)し、別表五(一)の「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」で「増③」欄に記入する(商品の税務上の簿価が会計上の簿価を上回る部分として残す)必要があるという。

一方、令和11年10月1日以後の場合(【参考4】②)、仕入時に計上した仮払消費税等20万円は、本来、商品の取得価額に含めて処理すべきところ、そのうちX期中に販売した15個分に相当する15万円については、売上原価となるため、税務上は決算時に雑損失として計上すれば損金算入されることに変わりはないことから、結果的に申告調整は不要だという。ただ、期末在庫の5個分に相当する5万円は、売上原価とならず損金算入できないことから、法人税の所得金額に加算しなければならないので、期末在庫5個分の5万円についてのみ別表四で加算(留保)し、別表五(一)の「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」で「増③」欄に記入する必要があるという。

● 期末在庫が発生しない場合

例えば、X期に商品(本体価格10万円、消費税率10%)を合計20個(税込価額220万円)仕入れ、全てがX期に売り切れた場合、20個分全てが売上原価となるため、仕入時に計上した仮払消費税等のうち、仕入税額控除が制限される全額を、税務上は決算時に雑損失として計上すれば損金算入されることに変わりない。所得金額に加算すべき額も生じないため、申告調整は不要という。

 

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